『振込詐欺』が狙っている !

 

 

  驚愕する振込詐欺

 

 大音響を発して、市からのお知らせが流れる。

「何か急が発したのか」と驚いて耳を傾けると、振込詐欺について警察からの注意報だった…。などという経験があるだろう。

ここの処よく頻繁に流されている事を想い、気になって調べてみた処、驚愕する内容に茫然とさせられてしまった。被害件数の多さもさることながら、その手口の巧妙さには驚かずにはいられない。

警察の取り締まりを横目に、「振り込め詐欺」などの特殊詐欺の被害はハイペースで拡大しているという。

手口は多種にわたり、一概に「オレオレ」だけなのではなく、「架空債権請求」や「なり済まし請求」「ワンクリック詐欺」などの、要は銀行口座に金銭を振り込ませるという手口を使った詐欺行為を、全般的に振込詐欺と称して居るのだ。

警察庁の発表によると、最近の特殊詐欺被害額は平成20年までは年間250億円前後で推移していたが、悪用された口座を凍結する振り込め詐欺救済法が同年に施行されると、21年には約95億円にまで急減した。しかし、22年以降は再び増加傾向となり、昨年は約364億円と過去最悪となった。

今年に入っても被害は止まらず上半期は約2117千万円と昨年を上回るペース。下半期の7月~9月被害額は、3カ月間だけで約127億円にのぼった。「捜査は現状では手詰まり状態」(警察庁幹部)といい、打開策として捜査現場からは犯行グループの解明のため現行法では認められていない詐欺事件での通信傍受を求める声も高まっている。警察庁幹部は「オレオレ型が再び横行し始めたと思えば、最近ではギャンブル必勝法の情報提供名目や還付金詐欺などが急増し手口は次々と変わる」と指摘している。捜査関係者によると、1012月も79月と同ペースであるから、月40億円程度の被害が予想され、年間で初の400億円を超える可能性が高いという。

庶民の声には「暴力団よりよっぽどやっかいだ」とするものがあり、政府の対応が注目されるところだ。

1人の人間が被った振り込め詐欺被害の過去最高総額は、2011年に6月から12月まで岩手県の70代の男性が金融商品の購入立替を名目に、10数回にわたって指定された金融機関の口座に振り込み続けた事件で被害総額は4億数千万円がある。

警察発表の振り込め詐欺グループがせしめたとする最高額は、口座に約370人から30億円以上の入金があった例があり、30億円以上の被害となると、一詐欺グループが犯した被害金額としては過去最高総額と見られている。この詐欺グループは警察の捜査で2012524日に28人を一斉に逮捕され、逃亡した詐欺グループの首謀者も20121119日に逮捕された。


発祥と経緯

 

1915島田三郎に対する電報により為替送金を指示する詐欺未遂事件や、1986の「高校生の孫」と「孫の担任」を騙る42歳の男が「もしもし僕だよ」と電話を架けて電話相手に直接会って現金を受け取る詐欺事件など、この種の詐欺事件自体は過去にも存在したのだという。ただし、電話を架け金融機関の口座に振り込ませる手口の、所謂「振り込め詐欺」

が注目されたのは21世紀に入ってからである。

19998月頃から、200212月頃までの間に、電話で「オレオレ」と、身内を装って11人に銀行口座に振り込ませた事件があり、20032月に犯人を検挙した鳥取県警米子署が、この手口を「オレオレ詐欺」と称したのが「オレオレ詐欺」という言葉の誕生とされているとのことだ。また「オレオレ詐欺」で架空口座を用いる手の込んだ手口は、20032月中旬に東京都杉並区で誕生したのが最初とされている(200413月に検挙)。

この種の詐欺が広く知られる様になったのは「若い人の声で高齢者に電話をかけ、子や孫を装ったうえで困窮した状況を訴え、金が必要としてだまし取る」という「オレオレ詐欺」の犯罪を紹介して注意を喚起する報道がなされた事からであるという。

当初の手口は、手当たり次第に電話を掛けたり、電話帳に掲載されている氏名から一人暮らしの高齢者と推定される人を選んで電話をかけたりというもので、電話口に出たのが高齢者と見るや「オレオレ」と、俳優顔負けの演技で、さも遠隔地に住む子や孫であると錯覚させ、悲哀に満ちた声や緊迫に満ちた声で困窮に陥って居る(例1悪徳金融業者から大金を借り、直ぐに返さないと酷い目に遭わされる。

2交通事故や医療事故を起こし、直ぐに示談金や慰謝料を払わないと収監される。)などの状況を装い、所定の口座へ大金を振り込む様に仕向けるというものである。

新聞やテレビなどのマスメディアが手口を詳細に報道したため、かえって模倣犯を激増させた傾向が強いという。

逮捕者の中には「新聞を読んで、これなら自分もできると思った」と自供するなど、報道が事件を誘発したという事も言えるのだ。

当初は詐欺を行う犯人が1人で子や孫を演じていたが、「債務者」であると装って困窮を訴えるのに加えて「債権者」役も電話口に出るなどして「至急返済しなければ酷い目に遭わせる」などと脅迫する手口も使われるようになる。一方、演じる対象を、通勤に出た夫を初めとする、家族や親類に拡げて「交通事故」「痴漢」「横領」「傷害事件」「暴行事件」「借金返済」などの加害者や、債務者に仕立てる手口も使われ、危害を受けた被害者やその関係者、駅員、警察官、弁護士等の役割分担をするなど、多人数で演技を行い、更には背景にサイレン等の効果音を流すなどの演出も行うという、大掛かりな劇団型犯罪になっていった。

プリペイド式携帯電話を駆使して、異なる人物が異なる電話からかけ、被害者役に電話をかけさせるなど、全体として困窮に陥ったシチュエーションを演出する手法もあるという。その一方、本物の親類へ確認をとる連絡を妨害するために、詐欺をしかける相手の家族の電話番号まで調べ上げ、予めその親類へ電話して話を長引かせ「話し中」としたり、いたずら電話を何回もかけて携帯電話の電源を切らせる手法もとられた。

「オレオレ」ではなく、個人名を名乗るケースも増え、また、個人情報を入手し、相手の職業等に応じたシチュエーションを演出する事も行われる様になる。

(例1教員が教え子に淫らな行為や暴力行為をはたらき、示談金や治療費が必要として家族に振り込ませる、2医師が医療ミスを起こし、示談金や慰謝料が必要として家族に振り込ませる)

このように、初期には単独犯や数人での犯行であったものが、徐々に大規模な組織を構成するようになり、対象者の名簿(カモリスト)が存在する事例や組織内でマニュアルを作成し、訓練を行っているとの事例もあるという。

単に「オレオレ」と名乗って詐取する手法から派生して、千差万別の手口が用いられる様になったことから、2004129日に警察庁によって統一名称として「振り込め詐欺」と呼ぶことが決定された。

 

 

巧妙な手口と組織

 

成りすまし詐欺

1「俺だよ、オレオレ」「わたし、わたし」「お母さん……」「久しぶりだけど、覚えてるかな?」など、親族(子や孫)を装った電話をかけ「交通事故医療事故を起こして示談金が要る」、「タクシーやバスに会社の小切手や預金通帳の入ったカバンを置き忘れてしまった。お金を貸して欲しい」などの虚偽の急を訴え、現金を預金口座等に振り込ませる手口。

2縁者を装うだけでなく、警察官、弁護士、交通事故被害者、性犯罪被害者を装う手口もある。

 

架空請求詐欺

有料サイトの利用料金などの架空の事実を口実とした料金を請求する文書等を送付するなどして、現金を預金口座等に振り込ませるなどの方法によりだまし取る手口。

 

融資保証金詐欺

架空融資を装い、融資する旨の文書等を送付するなどして、融資を申し込んできた者に対し、保証金等を名目に現金を預金口座等に振り込ませる手口。

 

還付金等詐欺

税務署や区役所等を名乗り「税金や医療費等を返還します」「今日が手続きの締め切りです」「ATMで手続きができます」等とATMに行かせ、携帯電話で還付手続きを指示するふりをし、犯人の口座に振り込む手続きをさせる手口。

 

電話を掛けて騙し取る詐欺の場合の時間帯は、概ね平日の午前10時頃、又は午後2時頃が多い。これは電話に出る人間が一人である場合が多い時間帯である事と、金融機関で振込み可能な時間に合わせての事らしい。かつては金融機関で振込みを締め切る時間である、午後3時の少し前に不安を煽りたて、早く振込みをさせるために平日の午後2時半頃が特に多かったのだという。

「振り込め詐欺」という言葉が定着するにつれ、振込み型の詐欺は減少したが、指定場所へバイク便業者や代理人が被害者宅近くに受け取りに現れ、手渡しをさせるなど多様化している。また、だまし取る対象も現金に限定されず、カード(キャッシュカードやクレジットカード)を送付、又は手渡しをさせるなどし、巧みな話術や手法でカードの暗証番号を聞き出し現金を引き出す手法も登場しているという。

詐欺グループ内ではそれぞれ役割分担について、金を要求する電話を掛ける役の人間を「掛け子(架け子)」、振り込ませた金融口座から引き出す役の人間を「出し子」、金融口座を使わずに直接接触して現金を受け取る役の人間を「受け子」などの俗称で呼ばれているなど、組織的な形態になっているという。

「架け子」がきちんと電話をしているかを管理する「番頭」、「出し子」や「受け子」には金銭を持って逃亡するのを防止するための「見張り役」と、持ち場が整備され、騙す為の集団が形成されているという。

現金受け取り現場を担う「出し子」や「受け子」の「リクルーター」がいることがあり、また、架空名義のレンタル携帯電話や、金融機関の架空口座などを提供する「道具屋」、マンション等の犯行拠点を準備する「代行屋」、だましの電話をかけるための名簿等を準備する「名簿屋」など、犯行を手助けする組織と連携したり傘下に持ったりしている。

これらのように役割が細分化されている一方で、厳しいノルマやペナルティによってシステム化されているため、振り込め詐欺グループは会社組織のようだと形容されることもあるという。このような細分化により末端の「出し子」や「受け子」を逮捕しても、「本丸」の摘発をしにくいという性格を持っているらしい。

アルバイト感覚で「出し子」や「受け子」として犯行に加担する者も多く、「出し子」や「受け子」の低年齢化が指摘されている。中には、中学3年の女子が「受け子」として逮捕された事例もある。


高齢者世帯被害者と対策

 

被害者(連絡を受け、直接入金手続きを行った者)は2003女性が約7割、60歳以上が全体の約8割。被害世帯の半数以上は、家族構成が65歳以上だけの『高齢者世帯』であり、2004年以降は、主婦の被害が急激に増えている。

共通する特徴としては、あまり働いておらず、自分自身で生活を支えるほどの賃金を得ていない者が大多数を占めていることが挙げられている。

被害が多い地域では加害者、被害者、被害金額とも関東(最も多いのが東京都)であり、東京、千葉神奈川埼玉13県で半数超、被害額の8割が首都圏で引き出されている。

逆に被害が少ない地域は大阪府である。理由としては、土地柄からか世話好きな性格の者が多い為、困窮を装う電話にはことさら詳細な説明を求めようとする大阪人が多く、振り込め詐欺グループにとっては長電話になるうちに話の辻褄が合わなくなることを避けようとするためとだろう。

検挙率は極めて低く、2004年度の検挙率はわずか5.2%に留まり、その後、警視庁は2004年度、全国に先駆けて副総監を本部長とする対策本部を設置し、これに道府県警本部も倣い対策本部を設置し専門の捜査班、技術班を編成し公式ウェブサイトでも、広く市民へ対策を呼びかけていることから幾分検挙率は上がったが、それでも2006年度の検挙率は16.0%に留まっている。

こうした社会現象といっても過言ではない振込詐欺事件の増加に伴い、政府は振り込め詐欺容疑者に対し、販売目的で作った他人名義の口座(架空口座)の作成や、その取引を禁じる本人確認法犯罪収益移転防止法、プリペイド式携帯電話販売時の身元確認を厳しくしたり譲渡を禁ずる携帯電話不正利用防止法が制定されたが、依然として効果が上がらないでいる実態がある。

その他に、振り込んでから詐欺と気付いて口座の利用停止を求めた場合、従来は金融機関が口座利用停止処置を拒み、振り込んだお金はどうしようもなかったが、次第に口座利用停止や、強制解約の要請に応じるようになり、残った預金から返還を受けられる例も増えている。

20071214に振り込め詐欺等の犯人の口座を凍結して、被害金を被害者に返還する法律として、振り込め詐欺救済法が成立。同月21日に公布2008621施行された。

これまで振り込み側の対策は多面に出来たが”振り込まれた側”は、後で振り込め詐欺と気づいても、口座から返金を求めることがほぼ不可能だったり、名義人の個人情報の開示、および口座の停止または強制的な解約ができない問題があったが、預金保険機構のウェブサイト内にある「振り込め詐欺救済法に基づく公告」にて、振り込め詐欺で利用された(または可能性のある)口座の一覧が公開され、振り込み前に口座を確認できるようになった。

20133月には、東京都で電話会話自動的録音器を被害に遭いやすい高齢者を中心に、15千世帯に無料で貸し出す取り組みが行われている。

 

防犯について

家族と会って話し合い、前もって「電話での呼び掛け方」や「合言葉」を決めておく。電話でお金を貸してなどと頼んだりしない。

離れて暮らしている家族と普段から連絡頻度、共有する情報、信頼関係を高めておく。

(特に高齢者は)常に留守番電話にセットし、電話がかかってきても電話に出ずに留守番電話で受け、相手に録音されている留守番電話で話をさせ、合言葉で確認できたら電話を取る。

「携帯電話の番号が変わった」「携帯電話を無くした」「(友達、上司、知り合いの携帯電話、会社の固定電話)別の電話を使っている」という電話には、一度切って元の電話番号にかけ直す。

ナンバーディスプレイ機能を活用する。

銀行、クレジットカード会社、警察を名乗って暗証番号やインターネットバンキングの契約番号やパスワードを聞き出そうとすることに警戒する。


日本国外事例

  • 中国では2008年の2ヶ月間の間に28千万円もの被害が出た。

  • 20096月には中国公安省が、1年間のあいだに電話やメールを使った振り込め詐欺28,000件を摘発、容疑者7,000人の拘束を明らかにした。

  • 韓国では「電話詐欺」もしくは「ボイスフィッシング(voice phishing)」と呼ばれている。近年その手口が巧妙化しており、新型インフルエンザを装う振り込め詐欺が発生したとして韓国政府が国民に向け注意を促した。

  • 20095月には、ブルネイ国王ハサナル・ボルキアインドネシアの選挙に絡んだ振り込め詐欺に遭い、200ルピア(約2億円)をだまし取られた。

  • アメリカ合衆国では、高齢者を狙うケースだけでなく、偽の慈善団体をかたって振込みを要求する詐欺や、嘘の賞金当せんを知らせて手数料を振り込ませる詐欺なども発生している。